祐吾がふと目を覚ますと、愛しい奈々が自分の腕の中でスヤスヤと眠っていた。
それは温かく心地よく幸せで、額にそっとキスを落とすとそのまままた眠りに落ちた。

次に目を覚ましたとき、もうベッドに奈々はいなかった。
慌てて寝室を出てリビングの扉を開けると、室内にはコーヒーの香りが漂っている。

「奈々…?」

「あ。祐吾さん、おはよう。」

身なりを整えた奈々が、キッチンからにこやかに顔を出した。
あのね、あのね、と小動物のように寄ってくる。

「あの洗濯機すごいです!ほら、服が前よりふかふかに仕上がってる。着心地最高!うちにもあの洗濯機がほしいくらい。」

ひとりキャッキャとはしゃぐ奈々に、祐吾は安堵の溜め息をついた。

「いなくなったかと思った。」

「私が?祐吾さん、案外寂しがり屋さんですね。」

「そうかもな。」

奈々には言われたくないと思ったが、ここは素直に返しておく。
目の前に奈々がいてニコニコ笑っている。
それだけで祐吾は幸せな気分になった。

「キッチン勝手に使っちゃいましたけど、よかったですか?」

「ああ。何でも勝手に使えばいいって言っただろ。」

そう言ってダイニングチェアに座ると、湯気のくゆるコーヒーが出てくる。
もうひとつマグカップを持って、奈々が対面に座った。