このお店は各席にメニュー表はなく、壁にメニューが貼られているタイプだ。
一通り見渡せば、どれも一皿二五〇円と安い。
安すぎて肉の産地が気になったが、目の前の奈々がずっとニコニコしているので倉瀬は言うのをやめた。

「私のおすすめ適当に頼んでいいですか?」

「奈々に任せるよ。」

張り切る奈々が微笑ましく、倉瀬は奈々に任せてその姿を見守る。
メニューを選んでいる時も店員に注文を告げている時も倉瀬に話し掛ける時も、全てにおいてにこやかに楽しそうな奈々。
それを見ているだけで、倉瀬は十分お腹いっぱいだった。
一緒にいるだけで心が満たされるなんて、倉瀬は不思議な気持ちになった。

程なくカルビが運ばれてきて、奈々はさっそくカルビを網の上に乗せる。
じゅっといい音がして、煙が上がった。
トング等もないので自分の割り箸を使う。
この店の雰囲気がそうさせるのか、細かいことを気にする方が野暮のようだ。

「じゃあ、いただきまーす。」

奈々は焼けたお肉を小皿に取り、ふーふーしながら頬張った。

「美味しい~。」

左手を頬にあててニコニコ微笑む。
倉瀬と目が合うと、更にニコニコ顔になった。