何となくそわそわしてしまって、奈々は聞く。

「私、お邪魔じゃないですか?」

「バーカ。呼び出したのは俺だろう?」

「まあ、そうですけど…。」

会いたかったのは奈々も一緒だったが、それを言うのは何だか照れ臭くて言葉はそのまま飲み込んだ。

「それより、ちょっと充電させろよ。」

「へ?」

ソファに座る倉瀬に、ちょいちょいと手招きされる。
何だろうとのこのこ近付いて行ったら、腕を引っ張られて抱きしめられた。

「ちょっ、とっ、」

「いいだろ。減るもんじゃなし。」

そういう問題じゃない。
そういう問題じゃないけど…、まあいいか。

奈々も倉瀬の背に手を回す。
温かな体温とトクトクという穏やかな鼓動。
幸せな時間がゆっくりと流れた。

そっと体を離すと、倉瀬がじっと見つめてくる。

「お前…。」

「何ですか?」

「ホワイトデー何がほしい?」

「…はい?」

倉瀬の言葉に奈々はきょとんとする。

そういうものは自分で考えてプレゼントしてくれるものではないだろうか。
定番のクッキーや飴、はたまたアクセサリー等いろいろあるはずである。

呆気に取られていると、倉瀬は言い訳を始めた。

「いや、お前、アクセサリーって顔じゃないだろ。」

「…軽く傷つきました。」

「そういうことじゃねーよ。アクセサリー好きか?奈々がアクセサリー付けてるの見たことないんだが。この機会に、一式買ってやろうか?」

「一式って…。」

時々、倉瀬の金銭感覚がおかしい。
いや、おかしいわけではないのかもしれない。
ただ、奈々の金銭感覚とズレるので、やっぱりお金持ちなのかな、と勘ぐってしまう。