その日の定時近く、内線電話を受けた奈々はとにかく謝っていた。

経理に提出した伝票書類に不備があったのだ。
その伝票作成を担当したのは奈々ではなかったが、担当者が不在であるということと電話に出てしまったことが重なって、代わりに怒られていた。
支払いに関係する重要な伝票で、更に期限が差し迫っているため今日中に修正しなくてはいけないということだった。

奈々は電話を受けながら時計を確認する。
定時まであと十五分。
担当者は不在。
確実に間に合わない、今日は残業だ。

奈々は小さくため息をついた。

嘆いていても仕方がない。
嘆きたいのは経理の人だ。
修正した伝票の最終確認と処理は経理なのだから。

奈々はメモをした伝票番号をパソコンの画面に打ち込み、伝票データを検索した。
出てきたデータをひとつずつ丁寧に見直し修正をかけていく。
単純な作業だが、今度こそミスをしないように慎重に進めなければいけない。

いつの間にか没頭していて、気付けばもうフロアには数人しか残っていなかった。