奈々はここ数日のことを思い出していた。

そうだ。
風邪だと思って風邪薬を飲んだ。
陽性反応が出たときに素直に喜べなかった。
産むのを躊躇った。
きっと私が赤ちゃんを大切にしなかったから、だから還ってしまったんだ。
ごめんね、ごめんね。

奈々は一人自分を責め、わあわあ泣いた。

祐吾には言えない。
秘密にしようと思った。
言ったらきっと飛んで帰ってくる。
変に心配をかけたくない。
祐吾の仕事の邪魔をしたくない。
これは自分の中だけで留めておく。

だから、今だけは泣いてもいいでしょう?

医師から、行為は一ヶ月後からと言われた。
祐吾が帰国するのは一ヶ月半後。

大丈夫、バレない。
大丈夫、大丈夫。

奈々は自分に言い聞かせるように何度も呟いた。