「お前、誕生日はちゃんと申告しろ。まさか四月だとは思わなくて大分過ぎただろうが。」
「もしかしてこれ、誕生石…?」

四月の誕生石はダイヤモンドだ。
四月生まれの奈々だが、誕生日自体、祐吾に伝えたことはなかった。

「何で知ってるの?」

「俺を誰だと思ってる。会社の人事データベースにアクセスした。」

「ええっ!直接聞いてくれたらいいのに。」

「それじゃサプライズにならないだろう?」

祐吾の優しさがあったかくて嬉しくて、奈々は泣きながら笑った。
大事そうに、左手を胸に押し付けている。

「奈々、少し寂しい思いをさせてしまう。」

「…うん。」

「その指輪はお守りだ。奈々は俺のものだからな。変な男にひっかかるなよ。」

「…うん。」

返事をしながらどんどん涙が溢れてくる。
寂しい。
離れるのが怖い。

だけど、こんなに嬉しい。
奈々を想う祐吾の気持ちが、奈々の心を喜びで満たしていく。

私はあなたに何をしてあげられる?
何をしたら喜んでくれる?

「祐吾さんありがとう。…私、試験頑張ります。」

目の前にあること、まずはそれを頑張る。
勉強を見てくれた祐吾のためにも、自分の将来のためにも。

「俺が教えてやったんだ、完璧だろ。」

悪戯っぽく笑う祐吾が頼もしくて愛しくて、奈々はまた泣きながら笑った。