「ただいま〜。」
一輝さんがリビングのドアを開けると、そこには3人の男女がいた。
「あら、おかえり!2人とも。待ってたよ〜!」
「無事退院できて良かったよ。おめでとう!」
「あ、あの。一輝さん。この方達は?」
「あぁ、紹介するよ。僕の母と父。そして妹だよ。」
「初めまして・・・・・・ではないけど。私は、一輝の父の徳郎。こっちは、妻の幸恵。そして、一輝の妹の陽茉莉です。」
「ど、どうも・・・・・・。ご丁寧に。あの、百合子です。」
「ねぇ一輝。本当に百合子ちゃん。私達のこと、思い出せないの?」
「うん。まだ記憶が戻らなくって。」
「そう・・・・・・。」
「まぁ、あれだけの事故だったんだ。仕方ないさ。」
しんみりして空気が重くなる。
すると、陽茉莉ちゃんが明るい声で言った。
「も〜!皆、しんみりしちゃって〜!これから取り戻していけばいいじゃん!明るくいこうよ!明るく!」
「そうね。陽茉莉の言う通りだわ。」
「これからゆっくりと思い出していけばいいんだよ。百合子ちゃん。」
「私達に気を使わなくて良いし、敬語も使わなくて良い。だって、家族なんだもの。」
「はい。ありがとうございます。」
「おかえり。百合子ちゃん。」
暖かい言葉。
その言葉に勇気づけられた気がした。
「ただいま!」