「百合子!!」




名前を呼ぶ声が聞こえ、さっきの看護師さんと先生と若い男性が入ってきた。




男性は、眼鏡をかけて凛々しい顔をしていた。




(もしかして、この人が私の夫・・・・・・?)




「良かった〜。意識が戻ったんだね!」




すると、主治医であろう先生が私に近づき、こう言った。




「榊原さん。あなたは、事故にあって現在、記憶喪失の状態なんです。」





「き、記憶喪失・・・・・・?」




「はい。事故にあった衝撃で記憶を失っているんです。何か思い出せることはありますか?」




「いいえ、何も・・・・・・。」




「そうですか。分かりました。しばらくは入院になりますが、落ち着いたら退院できますよ。」





「はい・・・・・・。」




「じゃあ、私はこれで。」





先生と看護師さんが去ってしまうと、男性と私の間に沈黙の時間が流れた。