「………」
――華取咲桜。名の記された記憶のファイルをめくる。
華取在義の一人娘。母親は三歳のときに亡くなっている。
目立つことはないが正義感が強く、間違いと思えば教師相手でも退かない肝がある。
大人しそうな外見だが、それに似合わない通り名もあるそう。
それとは別であるが、二宮さんに言わせれば、評価は「在義の娘」。
炎の塊、太陽の塊と警察内部で評される、華取在義の愛娘。
つまりは華取咲桜もその資質があるということ。
「……炎の塊、ね」
それが華取さんに匹敵するレベル、とか言われたら引くしかないけど。
俺の中での華取さんの評価はそういうもんだ。
まずは遠目に観察してみるか。
一年生の教室は本館の二階。華取咲桜のクラスを正面から見える別館の空き教室に入った。
別館は、生徒の出入りは自由。特に問題の起きない藤城学園では、鍵はあってないようなものだ。
いくら大きな問題がないとはいえこのご時世、こいうとこ、ちょっと改善の余地あると思う。