「だって華取先輩を動揺させるのなんて、咲桜ちゃん引っ張ってこなきゃ出来ないもの」
動揺させるのが目的だったんか。
派手めな美貌で艶やかに笑うマナさん。
「まあ今回はちょっと毛色が違うんだけどね?」
「……何企んでんですか」
「咲桜ちゃんの未来の旦那様にいい人がいるからどうかなーって」
「何言ってんだお前は」
その声をとともに竹製の一輪挿しが飛んできた。
マナさんの耳の横をすり抜け、壁にぶつかって転がる。………え?
「……流夜くん?」
入って来た人を見て、在義父さんが声をあげた。
知っている人かな? 私は首を傾げて、その人をよく見ようと顔をあげた。
『りゅうやくん』と呼ばれたその人は在義父さんを見てすまなそうな、疲れたような顔をした。