いくら華取の父親が県警のトップだからといって、華取自身はこちら側の人間ではない。

在義さんも、それを望んではないだろう。

そして自分は、事件の世界から離れる気はない。ここが自分の生きていく場所だと決めている。

はじめから失った身として、自分にしか出来ないことがこの世界には多くあった。

これ以上失うものがないから、捨て身で飛び込める。

どれほど血まみれだろうと。どれほど死にまみれていようと。掌からこぼれるものを、持った覚えはない。

腐れ縁の幼馴染は、勝手に傍にいる。だから俺も、勝手に二人の傍にいる。どちらが先か、なんて鶏と卵の問題は発生もしない。

でも、あの子は違う。こちらの――事件の世界に巻き込まれるべきではない子だ。

勿論、本人が望めば話は変わってくる。

警察官になりたいと本人が進路を希望すれば、教師として生徒の進路を邪魔する気はない。

だが今のところ、華取からそんな話は聞いたことはないし、在義さんからもうかがえない。