「取りあえず、お前座れ。あとあまりでかい声出すな」
「あ、おー悪かった」
遙音は腰を下ろし、弁当を覗き込んだ。
「なんつーか、すげー美味そうなんだけど。食ってもいい?」
「全部食ったら追い払う」
「わかってるよ。少しだけ。いただきまーす。……うわっ、うめえ! なにこれ、家庭の味ってやつ? 誰に作ってもらったんだよ。俺もほしい」
「秘密」
「えー、あ、じゃあこっちやるからもうちょっと食わせて」
と、遙音は持って来たスーパーの袋を出す。大人げなくも少し悩んだ。
「……嫌だ」
そして出た答えがコレ。遙音は、当然のように不満顔だ。
「えー、けちー」
「けちで結構。それより、今日はなんだ?」
「あ、ほうはな」
俺が断っても、勝手につまみ食いをする遙音。
けどまあ、遙音ももう食事を作ってくれる人もいないからと自分を納得させ、弁当をわけてやることにした。
だが食いながら喋るな。