「ああ。どの範囲まで言っても大丈夫かな、と思って」
「範囲?」
「そう。――仮婚約っつーか、偽婚約、な。華取の周り、友達とかで誰なら伝えても大丈夫か、とかそういったことだ。同じように俺の周りはどこまで話しておくか。愛子は学内には関わってこないだろうけど、あまり口の軽い奴がいたら気をつけた方がいいだろう。その辺りもお互い把握しておいた方がいいと思って」
「あ――確かにそうですね」
もし俺の知り合いで話を聞いている奴と華取が会話することになったとき、食い違っては不信感を持たれるだろう。反対も然りだ。
華取は口元に手を当てて考えている。
「でも……完全に秘密でなくていいんですか?」
「俺は構わないけど……華取が苦しくならないか?」
友達にも嘘をつかなくちゃいけなくなる。そう言うと、華取は瞬いた。
「そういえばそうですね。私の方では……笑満には言っておきたいと思います。口は堅いですし、面白がってもからかってきても、下手なことは言いません」
俺が提案する前に名前が出た。華取も松生のことが大事なんだな。
「日義はいいのか? 三人でいること多いだろう」