華取は引き返し、勉強机の上のスマートフォンを持ってきた。

机の上にはノートが見えた。

「遅くまで勉強してたのか?」

「え?」

スマートフォンを操作していた華取はきょとんと見上げてくる。

俺の視線が机に向かっているのに気づいて、「あ、あれは」と言い繕った。

「笑満が出してくれた課題です。私、勉強の方はあまりよろしくないので……でも、笑満と頼と一緒に卒業したいですから。笑満が、自分の復習にもなるからって、問題作ってくれるんです」

なるほど、と納得がいった。

華取の成績は、本人が言った通り。一方、日義は学年主席。松生も、トップクラスの成績だ。

私立藤城学園は、県内でもトップレベルの進学校だ。塾やら予備校やらに通っている方が多い。

だが華取は家のことをしているようだから、そんな余裕はないのかもしれない。

そこを松生が補ってくれている。いい友人だな。不法侵入上等の、こっちの幼馴染たちに見習わせたいくらいだ。

「ラインでもいいですか? アドレスと番号もそっちで送りますね」

華取に促されて、肯く。