眠たくて視界がはっきりしないのか、目をこすっている。
もしかして訪ねてくることを見越して起きていたんじゃ……と刹那思ったが、違うようだ。
口ぶりからして、来たのは在義さんと思われていたようだし。
子供があまり夜更かしするなと言わなければ。
「挨拶だけ、来た」
「あ、はい。わざわざありがとうございます」
華取は丁寧に頭を下げた。律儀だ。
……と言うか、眠気で朦朧しているのかもしれない。瞳がぽやんとしていた。
そのくらいなら早く休めばいいものを。
「ご飯、美味しかった。ご馳走様」
「お腹いっぱいになりました?」
「ああ。久しぶりに手作りをいただいた。ありがとう」
「それはよかったです」
……なんか、こいつの周りにぽわぽわした花でも待っていそうな、毒気の抜かれる笑顔だ。
「あと、華取の連絡先を訊いておいてもいいか? 今日はもう遅いから、話は日を改めたいと思う」
「あ、うんそうでした。ちょっと待ってくださいー」