「小学校でも中学校でも、そういったことは欠片もなかったんだ。だからむしろ心配になってしまって……。我慢させているんじゃないか、と。本当は泣きたいところを笑っているんじゃないかって……」

「………」

在義さんの不安は、そうかもしれないと思った。

華取は基本的に学校でもよく笑っている。

一緒にいるのは松生笑満(まつお えみ)や日義頼(ひよし らい)。

他の生徒が愚痴をこぼすような場面でも、華取は不満を言わずに行動する。

……無意識に我慢して、気持ちを抑え込んでいるのかもしれない。

なら、

「在義さん」

空気まで引っ張って沈む在義さんに呼びかけた。

「華取のことで、俺が出来ることがあったらなんでも言ってください」

在義さんの心配も、華取を知る者として放ってはおけない。

ただ素直に、華取が泣けないでいるなら、自分がその場所になりたいと思った。