仮婚約、などという、口約束だけとはいえ謎の結果に落ち着いてしまった原因は、途中で聞き捨てならない話に目くじらを立ててしまった俺にある。

愛子だけでも大変なのに、良識を持った在義さんにまで目の敵にされたら、仮婚約とかいう謎の事態が更にほかの内容に化けかねない。

途中で華取と打ち合わせた方向から逸らしてしまったから、再度話さなければいけない。

華取から呼んでくれたこのタイミングで終えておきたいところだが……。

しかし強引に見合いの席などに連れていかれたにしては、家での華取は怒ってもいないしやけにさっぱりして見える。

……学校でも逢うことはあるから話は出来るだけ早くつけたかった。

「華取、もう遅いから寝た方がいい。また今度、夕飯をいただいたお礼をしたい」

提案すると、華取は「わかりました」と肯いて、リビングを出て行った。

在義さんもいることだし、礼をするという口実で話すタイミングが作れたらいい方だろう。

今日中に話せれば一番だったけど、華取の様子からして、別れた後に愛子からまた無理難題をふっかけられたわけではないようだ。