「待たせちゃったね、流夜くん」
リビングで在義さんを迎えた俺は、ある意味心配になって見上げた。
「いえ、大丈夫ですか?」
「あー、うん。なんか洗面台で寝かけてたみたいで」
ははっと自嘲気味に笑う在義さん。
その笑い方は、先ほど味見のときに見た華取とそっくりだった。さすが親子。
しかし洗面台で寝かけていたのか。……あの華取在義が?
「はーい、熱いから気を付けてね」
華取が味噌汁椀を持って来てくれた。ほかの皿はすでに並んでいる。
なにかもっと手伝うべきだと思ったのだが、俺の行動出来るレパートリーはほとんどなかった。
家事をろくにしないでいると、こういうとき恥をかくものなのか……。
なにかを学んだ気がする。
「じゃあ私、上にいるから。食べ終わったら呼んで」
「片付けはしておくからもう寝なさい」
在義さんの言葉に、華取は一瞬迷いを見せた。
話があると言ったのを気にしているようだ。
華取と二人で企んだ手前、在義さんには聞かせたくない。
ここですれ違いになってしまったら、タイミングは明日以降になってしまうな……。
かと言って中座して華取と二人きりになるのも気が引ける。
……在義さんの目の前でそんな真似をする勇気はない。
ここは自分がどうにかするか。