言いながら、味噌汁の味見をしてもらおうと、小皿に注いだ。

「どうぞ」と渡すと、先生は戸惑っていた。器を受け取ろうともしない。

「味見とか苦手ですか? あ、材料にアレルギーあるとか?」

そう思って材料を見分する。

その間に先生は小皿を受け取って、「いただく」と口に含んだ。

「……うまい」

小さかったけど、そんな声が聞こえた。

急に、肩から緊張が抜けた。

「ほんとですか? よかったー」

先生の反応で、私は安堵した。先生の好みだったのは嬉しい。

「やっぱりすきな味とかありますからねー。よかったです」

在義父さんもそろそろ来るだろうしと、お椀によそっていく。そんな私を見て、先生は言った。

「華取……なんか楽しんでないか?」

「楽し? ですか。……そう見えます?」

自分の頬を引っ張ってみる。楽しそうに見えたのかな? すると、頬をつねっていた指を先生に止められた。

お、おお? 突然の先生の行動に戸惑った。傍から見たら手を繋いでいる格好ではないか? 

私の方を見てくるために先生の顔に影が出来て、昼間みたいに近づく。