「むしろ父さんの仕事につきあってくれてありがとうと言うべきでしょう。在義父さんは休日まで仕事中毒ですからね」
「………」
先生は、呆気に取られたような表情で私を見て来た。ん、おかしいこと言ったかな?
「先生?」
「あ、――いや。なんでもない。それより、手伝えることはあるか?」
先生は席を立ち、キッチンの方へやってきた。
私から御飯茶碗を受け取り、卓に並べてくれる。
疲れているんだから座っててくれてもいいのに……律儀な性格も隠されていたようだ。
それを眺めていた在義父さん。
「……なんか流夜くんが婿でいい気がしてきた」
「はっ? あ、在義さん? 疲れてるんですか……?」
在義父さんに寝言みたいなことをぼそりと呟かれ、先生が取り乱した。
私は在義父さんが相当疲れているのだと理解した。
父さんは眠くなると結構意味不明な言動をする。
その証拠に、ふらりと立ち上がった。
「目がぼやける。ちょっと顔を洗ってくる」
「あ、タオル置いてあるからねー」
声を投げると、ありがとう、と廊下の向こうから返事があった。
在義父さんが席を立ったのを見てから、鍋に火を通していた私の方へ先生がやってきた。
「華取」