「ええ、本当よ。先輩の場合、元は警視庁にいたから顔を知られているし、自ら県警へ移られたとはいえ、元々凄腕だからね。先輩の周りには味方がたくさんいて、流夜くんもその中の一人みたいなものよ。でも、なんの派閥や後ろ盾もない先輩だから、後ろに取り入る隙が無くて、先輩自身に近づくって言ったら、咲桜ちゃんが狙われるでしょう。先輩の系譜を作るために、一番取りつきやすいのは一人娘の咲桜ちゃんなのよ」

警察って、結構派閥なものだからね、とマナさんは苦笑した。

そこまで言われれば、なんとなくわかってきた。

華取在義の一人娘、というのは、自分が思う以上に大きいようだ。

「それで神宮先生ですか……。私たちが藤城だって、マナさんが知らないわけがないですよね?」

「ええ、勿論」

「じゃあなんで勧めたんですか? マナさんが元々本当に婚約なんかさせる気がなくても、危ないじゃないですか」

勘のようなもので、薄々気づいていた。

マナさんは今日の件、本当に婚約までさせる気なんてない。

現状が、マナさんが狙ったものではないかと思う。

「面白そうだから」

にっこり、また艶っぽい笑みを見せた。

あーはいはい、マナさんはそういう人だ。私は簡単に納得した。