私にも心配はあった。

さっきから私と在義父さんのため――という言い方をする先生とマナさん。

けれど、先生は社会人で当然結婚の話があってもおかしくない年齢だ。

仮婚約だろうと、受けてしまってはむしろ先生への弊害の方が大きい気がする。

「俺は気にしなくていい」

先生は大した感情も見えない声で答えた。

「本人がこう言うんだから、流夜くんの方は気にしなくていいわよ。――これで、今のところの問題は解決かしら?」

マナさんはにっこり、妖艶な笑みを見せて首を傾げた。

そこまで言われては、私に問題は見つけられなかった。

むしろ、マナさんの策に乗るのは嫌だと言っていた先生が、簡単に受けてしまったのでどうしようもなかった。

下手なことは言わなかったと思うけど、どうしたもんかな展開になってしまった。

……やっぱり自分で処理出来る範囲では提言しておくべきだったか。

……そう思ったところで、何が言えたというわけでもないだろうけど……。

仮婚約と言っても、マナさんが言った通りただの口約束で、知るのはこの場の四人に限られた。

どうしてか先生は、そこは納得できないという顔をしているように見えたんだけど……。