「あまり大きくとらえなくていい、華取。愛子が言った通り、政略的なものから在義さんと華取を護る策だと思えば、どうってことないだろう」
「………」
そう、なのだろうか? 勢いを削がれた私は、浮かしかけていた腰を下ろした。
「でも、流夜くん……」
難しい顔をする在義父さんは、溜飲を下げられていないようだ。
「確かにそれだと咲桜は護ってもらえるけど、もしばれたときは流夜くんが危ないだろう。生徒と婚約なんて」
「正式なものではないですし、どこに証書があるわけでもありません。在義さんの存在を通して知り合いだったと言うことも出来ます。教職も続けたいわけでもありませんし。それに――少しくらい、恩返しをさせてください」
先生が軽く頭を下げた。
恩返し、という言葉に私は疑問を浮かべ、隣の在義父さんを見た。
……なんとも言えない顔をしている。