「はいはい。まあ、あたし的には流夜くんと咲桜ちゃんが面識持っただけでもよしとしましょう。咲桜ちゃん、落としたくなったらいつでも落としていいからね?」

「えっ? と……」

いきなり話を振られ、びくりとした。

余計なことは言うなと言われているのに、これはなんと返すべきか……。

あわあわしている私を見かねて、先生が何かを言いかけた。――ところで、

「でも、何も約束しないで帰しちゃうと、また流夜くんがふらふらするからなー」

口元に指を当てて、真面目な顔つきで言うマナさん。

ふらふらするって、先生は本当に何をしている人なんだ。

「あ、じゃあこうしましょう、仮婚約」

「「は?」」

先生と私の声が重なった。

在義父さんは一拍遅れて、「春芽くん?」と不審そうな声を出した。

「婚約の前段階って言うのかな。あたしもこれ以上流夜くんにも咲桜ちゃんにも他の人を紹介しない代わりに、二人には仮婚約しておいてもらいたい。便宜上の立場だけだから、そのくらいはいいでしょ? 流夜くん」