「そりゃ、これから次第じゃねえか? そのまんま娘ちゃんと流夜が結婚することもあるかもしんねえし」
のっそりと愛子が顔をあげた。
「……そしたら流夜くん、華取先輩の息子ですね」
「あー、そうだな。流夜にとっちゃ夢みてえな話だな」
在義の娘と結婚する。流夜に家族ができる。
愛子は頬杖をついた。
「あの子たちには幸せになってほしいなー」
「なるだろ。子供らの幸せを譲らねえために親がいんだからよ」
「……そうですね。あたしたち、親だったり親代わりだったりですからね」
「だろ。大丈夫だ。世界は案外優しいもんだ」
「……そうですね」
こつん。愛子は、カウンターに並べられた調味料のガラス瓶を軽く弾いた。刹那、振動で光が散乱する。
「……大事、ですもん」
おめえだけじゃねえよ。そう返してやった。
生きるたびに世界は近づく。
世界に光が欠けるときはない。
光を、この瞳で見つけられたなら。
END.『朧咲夜2-貫くは禁忌の桜と月-』に続く。