「そなの? 話聞こうか?」

「そ、そこまでは大丈夫、かな?」

私の声が揺れていることを察した松生(まつお)笑満(えみ)は、小首を傾げながらも深くは突っ込まなかった。

……笑満のそういうとこ、大すき。

しみじみと親友のありがたみを感じる傍ら、私の頭の中はもやもやしていた。

じーっと睨んで……もとい、観察していた先にいるのは、一階の職員室前の廊下で弥栄(やさか)先生と話している一年副担任で歴史科教師の神宮(じんぐう)流夜(りゅうや)先生だ。

背は高めだが、ダサい眼鏡にあまりしゃんとはしていないスーツ、穏やかな口調と表情であまり目立たない先生。

……という、認識だった。昨日、五月二十日の日曜日までは。

まさか神宮先生があんなだったとはなあ……。

どういうわけか私は昨日、『神宮流夜』先生と対面、会話した。

のだけど、未だにあれが『神宮先生』と一致し切れていなかったりする。