「愛子、在義に騙された詫びになんか食いモン出してやるよ」

「えっ……いいんですか? あ、あたしは本当に――」

自分の名前を出されてここまで来たのだから、少しながら罪悪感がある。仕掛けたのが他の奴だったらどうでもいいだけど、こと在義ならば違ってくる。しょうがねえ。

わざとらしい反応だった割には、俺が言い出すと本気でテンパり出した愛子を後目に、在義を追い払う。

「おめーはさっさと行けよ。んで、今度娘ちゃんのメシでも食わせろよ」

「……なんで咲桜を巻き込む」

「無頓着な流夜が惚れ込むくらいうめーんだろ?」

何回かいただいたことはあるから料理上手なのは知っている。が、ここで流夜の名前を出すのはただの嫌がらせだ。

案の定、在義は苦い顔になる。いいねえ、親父殿。

「愛子、なにがいい?」

「えっ、りゅ、龍生先輩が作ってくださるならなんでも!」

「おー、じゃあちょっと待っとけ」