「愛子吊し上げんだったらてめえ一人でやれよ」

「勿論。龍生の手は煩わせないよ」

……さて、客の方も、別に店内にいる必要もない面子だから、今のうちに奥に下がって

「龍生せんぱーい! お久しゅうございます!」

げー来たー。

勢いよく飛び込んできた愛子に、俺の肩が大きく跳ねた。

それを見た在義が小刻みに肩を震わせている。

……てめえが撒いた種だろうが何が面白れぇんだこの野郎。

「龍生先輩からのお呼び出しということですっ飛んできましたよ!」

「俺じゃねえよ、在義だよ」

責任も原因も在義にしかないので、押し付けて全っ然構わない。

愛子は口を尖らせる。

「えー、そうなんですか? でもあたし的には龍生先輩に呼び出された気でいるのでどうぞ何でも話してください」

「俺から話すことなんかねえよ。おい在義……いつまで笑ってんだてめえ!」

「いや……すまない。愛子、俺から話があるんだ」

「華取先輩ですか? ……二人って仲いいんでしょう? 降渡くんに随時報告もらってますよ?」

「まあ、悪くはないようだね」

苦い顔をする在義。この隙に……

「龍生先輩も座って座って」

「………」

逃げられなかった。