「龍生、今日、愛子ここに来るから」

いつもより早い時間に仕事をあがってきた在義は、俺の店、《白》のカウンター席にいた。

もう来客のピークは過ぎていて店内は静かだ。

――言っても、元から客というのは俺の稼業である探偵業務に関わる人ばかりで、看板もないここは、たまたま入って来た何も知らないお客さん、というのはいないのだが。

在義が警視庁を辞めた頃、俺も退職した。

あそこでやれることは終わっていたと感じたからだ。

祖父が現役の頃は私立探偵だった影響もあって、その道に進むことを決めた。

尊敬もなんもしてないじいさんだったが、俺が在義の相棒と呼ばれるまでになりえたのは、祖父の教育にあったように思う。

そのうち俺は、後継者に流夜と降渡を見つけた。そしたら俺と同郷の子供だった吹雪もくっついてきた。