「咲桜笑満―、バスケのお誘いだけど行くー?」
「行く!」
昼休み、友人からかかった召集に、笑満と揃って肯いた。頼は今日も机に突っ伏している。
体育館に向かって廊下を進んでいると、眼鏡の神宮先生がやってきた。
「神宮先生」
私が声をかける。この程度の会話は、どの先生とも日常だから、変に思われることもないはずだ。
すると先生――流夜くんは、少し困ったように微笑んだ。『神宮先生』の顔だ。笑満も立ち止まる。
「次うちらの授業ですよね」
「そうですよ。けど華取さん。またやりましたね」
「え、なにを――うっ」
ファイルの端から見せられたそれ。小テストのプリントだ。
紅い字で『名前を書きましょう』と書かれている。
小学生の答案のような文句に固まった。またやった……。
私は、小学生の頃からテストなんかで名前の書き忘れをよくしていた。