「大丈夫にしました」
「なにしたんですか」
答えたらぎっと睨まれた。当然言う気はない。
「……桃ちゃんの話、少しは聞いてるんじゃないですか?」
口調が伺う様なものになっていて、「少しは」とだけ答えた。
朝間先生自身、どこまで知っているのか……。
「咲桜ちゃんがずっとしてきたことは、愛されている自分を受け入れることです」
「―――」
知っている。全部、この人は。
「意味がわからなかったら聞き流してください。咲桜ちゃんは、愛されている自分をゆるせないでいました。だから……私は咲桜ちゃんの母親代わりとして、愛していくと決めました。神宮先生――神宮さんがその障害になるなら、私はあなたも排除します」
「その必要はありません」
顔だけ振り返らせて宣言した。
「これからは俺の位置では、俺が咲桜を愛します。……本物が現れるまでは」
「………」
背中に突き刺さるようなのを通り越して突き貫くような視線を感じながら、その場を離れた。
本物が現れるまでは俺があの子を愛していよう。根拠はないが、自分には出来る。それはわかっていた。
……『本物』の存在をゆるせるかは、自信がなかった。