誰にも言ってはいけないと思っていた。笑満にだって言えなかった。
愛されている自分をゆるせないでいた。
誰かに大事にされる度、心は痛んだ。笑顔を向けられる度、ごめんなさいと心の中で謝っていた。自分はそんな存在じゃない。大事にされたり、感謝されていい、いのちじゃない。
罪を背負っていないと、自分は生きていてはいけなかった。
記憶喪失で身元もわからない母。仕事を辞めてまで結婚した父。父の許嫁のような存在だった人。
誰も彼も、不幸したのは自分でなくてはいけなかった。
自分には罪がある。だからがんばって贖罪するのだ、その理由がないと生きていられなかった。
生きる理由がほしかった。生きていていい、理由が。
私が私に決めた理由は、贖罪だった。