「お――え?」
一度言われただけでは理解出来なかったようで、咲桜は見開いた目でこちらを見上げてきた。
なんだって? 驚きにあふれたその眼差しが問いかけてくる。
「だから、俺を幸せにした。誰かの幸せを壊したから責任があるって言うんなら、俺を幸せにした責任が発生してもいいんじゃないか?」
「え……流夜くん、幸せ、なの?」
「幸せだよ。『咲桜』と逢った時から、色々違ってしまった。俺も、家族を亡くした理由が理由なだけに、その犯人が捕まっていないだけに、自分が幸せになることを赦せないでいたかもな。そんな俺を幸せだなんて感じさせちまうんだから、お前はすごいよ。……お前は誰の幸せも奪ってない。誰かを幸せにしているだけだ」
「―――」
咲桜のおかげで、俺の生活も思考も、かなり変わった。
陽だまりのような、月明かりのようなあたたかさに、触れてしまった。もっと、触れていたくなった。