リビングのソファに下ろすと、なんとも言えない瞳で睨まれた。
怒っているのと恥ずかしいのと、なにすんだみたいな瞳だった。
「落ち着いたか?」
自分も隣に座ると、咲桜は口をへの字にして肯いた。抱き上げられた怒りと羞恥はまだ抜けないらしい。
「お隣――朝間先生の家なのか?」
「……うん。夜々さんが、師匠――お母さんと一緒に暮らしてる。生徒と個人的に親しいのはまずいかなってことで、みんなには言ってない。……それで、流夜くんにも言わなかった。ごめんなさい」
「それは構わない。教師には言わないよう言ったのは俺だよ」
そう言った時の、咲桜の弾かれたような反応を思い出す。
弥栄と親しいと知ったときは、弥栄に話したかったのかと思ったが、それは俺の勘ぐり過ぎだったみたいだ。
咲桜はしょげている。その様子に、また頭に手を乗せかけた。けれど、それより先に咲桜が口を開いた。
「……ここは父さんが育った場所で、夜々さんと父さん、年は離れてるけど幼馴染みたいなものなんだ」
「そんで『在義兄さん』って呼んでたのか」