「……ですか」

ふと、咲桜の口癖を朝間先生の口から聞いた。

どうやらこれは、朝間先生から咲桜にうつったもののようだ。

「では、今日のところはお暇します。くれぐれも、ですよ、神宮さん」

ぺこりと頭を下げて、朝間先生は出て行った。

扉が閉まるのを見て、咲桜の膝から力が抜けた。

「咲桜っ?」

慌てて抱き留めると、咲桜は腕にしがみついてきた。

「ごめん、流夜くん……」

「いや、朝間先生がいたのは驚いたけど、……朝間先生の言うことはもっともだと思うよ」

「うん……。ごめん、夜々さんのこと、話してなくて」

咲桜の顔は蒼ざめていた。このまま歩けるのか心配になって、咲桜を抱きあげた。

「わっ?」

「暴れない」

姫抱きされた咲桜は瞳を白黒させて戸惑う。

「ちょ、流夜くんっ」

「大声出さない。朝間先生が来るぞ」

言われて、はっと両手で口を押えた。……来ない方がいいのか?