咲桜が見上げてくるのがわかったが、俺の目は朝間先生に向いている。

咲桜が慕っている人な以上、隠し立てする理由は俺にはない。

「在義兄さんの言う『流夜くん』の存在は随分前から知ってました。でもまさか神宮先生とは。桜庭歴代主席と謳われた怜悧な優等生が、まさか藤城にいるなんて思わないですからね。なので、マナちゃんに訊いたら教えてくれましたよ」

「………」

愛子……!

久しぶりに愛子に殺意を覚えた。どんどん喋り過ぎだろ、お前。

……だが、見合いのそもそもの原因である愛子が出所ならば、猶更隠す意味がない。

「それはさておき。私は反対ですよ」

「反対されても変えないと言ったら?」

「神宮さんは私の敵になります」

……三回の応酬で、敵対関係が成立した。

なんだか、学校とは随分イメージが違うな。他人のこと言えねえが。

「誰であろうと、咲桜ちゃんを掻っ攫うような輩は私の敵です」

「………」

そっち?

朝間先生の目がガチだった。