「娘ちゃんが?」

在義さんの返事を聞いて、龍さんは俺を振り返った。

「流夜。勘違いする前に言って置くが、桃子はこれを遺して死んだワケじゃねえ。自殺でもない。これは桃子が亡くなったあと、桃子の手帳から出て来たもんだ。娘ちゃんの発作は知ってる。たぶん、桃子が書いたことが原因だろう。……在義と娘ちゃんに申し訳ねえ気持ちだけは、終生消せなかったんだろうな」

「……補足をありがとう、龍生。……あの、流夜くん? まだ涙ひかないの?」

未だにボロ泣きしている俺を、心配そうな顔で見てくる在義さん。

慌てて拭った。泣いたのなんていつぶりだろう。……バカ弟の教育に失敗したと知ったとき以来かもしれない。

「すみません……。咲桜の母親が、咲桜のことを疎んだり嫌っていたわけじゃないってわかったら……」

安心した。……とは、少し違うかもしれない。

咲桜が嫌ってはいない母が、咲桜を嫌っていなくてよかった。……そんなところだろうか。

「……罪人、ってところに反応するかと思ってたよ」

在義さんは肘掛けに頬杖をついて言った。言われて、俺もはっとする。