あまりに私が苦悩しているからか、神宮先生はそう提案してきた。
どういう意味だろうと顔をあげた私が見たのは、神宮先生だったけど、纏う雰囲気が学校の『神宮先生』だった。
「――急なこと言ってすみません。でもそうしてもらえると俺も助かるし、華取さんの被害も少なくてすむかと」
華取さん――学校では、『神宮先生』には確かにそう呼ばれている。
だから、素の神宮先生が受け入れられないのであれば、学校と同じように対応してもらえれば確かにいいのかもしれない――と思ったのに、なぜか感じたのは痛みだった。
それがどこへ繋がる痛みなのかはわからなかったけど、息が詰まるような痛みを感じた。
……なんだこれ。
「……華取さん?」
また顔を覗き込まれた。変らない衝撃の美形。
……でも、なんでか、その顔が『神宮先生』なのが嫌だった。
「……わかりました。言う通りにするから、その……話し方、戻してください」
……そう言葉にするのは難しかった。なぜかとても恥ずかしいことを要求している気になるから。
先生は二度、瞬いた。
「……どっちへ?」