「それは俺が訊きたい。確かにお前は「家族になる」って言ってくれたよ。でも、それはちゃんと咲桜の意思あっての言葉なのか。もし一時の同情なら、本当に忘れてほしい」

静かな声で言われて、私は軽く身を引いた。

右腕に抱き付いたとき、思い出してかけていた。自分の言葉。そして、流夜に抱き付いたこと。

私……言ったな。だんだん記憶が帰ってくる気配だ。

「………」

「よし、忘れろ。俺もそうする」

波に流されて出た言葉なら、本気にしないうちに消してしまえばいい。

流夜くんはそういうように、また背を向けようとした。

「やだ」

私から出たのは、頑固な声だった。

「咲桜?」

不審そうな声と共に流夜くんが振り返る。真っ直ぐ、見上げる。

「私、一度言ったことの責任は取るよ」