「あー、なにやらかしたんだろ……」

「流夜くん、怒ってたりしたの?」

「怒ってはなかったけど……なんか淋しそうだった。だから気になって」

「ん。じゃあ訊きに行こう」

笑満が、すたっと立ち上がった。

「流夜くん、旧館にいるだろうから、行くよ」

「え、笑満……」

「うじうじ悩んでる暇あったら行動する。はい、行くよ」

「でも、笑満……」

「でもとかだってを言わない。言ったでしょ。流夜くんなら咲桜をあげてもいいって。あたしだって自分の言葉の責任くらいとるよ」

ふん、と腕組みで見下ろされて、私は閉口した。

笑満も自分も、頭で考えるよりも足を動かす方が得意だった。今、その笑満の行動力が発揮されていた。

「さー行くよー」

まだ気が進まない私の腕を摑んで、ずるずる引きずっていく。

木陰で、道中のその声を、寝転がって聞いていた人には、気づかないまま。

「……りゅうやくん?」

頼、だった。