朝起きて、咲桜の腕が自分の右腕に絡んでいなかったら、完全に妄想だと思ったかもしれない。
あたたかさは、まだ腕の中にある。
抱きしめた鼓動。繊細な輪郭。涙の瞳。咲桜の行動が全部、咲桜の意思あってのことだと願いたい。そうすれば、あのあたたかさをまた抱きしめることが出来るかもしれない。
気づくのは、感情ばかり。
「………」
手を開いて、また握った。今はない細い指。
今夜は在義さんに呼ばれている。場所が龍さんの店というならば、咲桜は知らない話だろう。
邪道優等生。
正道不良。
最高の相棒と称される、対角の二人だ。