忘れられていた……。

咲桜が、昨日深夜にあったことを綺麗さっぱり――までとかいかないが、忘れていたことのショックが今頃来た。

昼休みに、旧館の資料室にこもって項垂れるくらいには。

名前で呼んでくれただけ、よかったと思うしかないのか……。

ここに遙音が来たら風邪が悪化したかを疑われるだろう。降渡が来たらからかわれる。吹雪だったら爆笑される。

……よく考えれば、周りにこういった相談が出来る奴、一人もいなかった……。

知り合いの中では(きずな)あたりは女性だけど、まず俺の話なんて聞いてもくれないことは確実だ。

会えばいつも物が飛んでくるくらいに自分、すごい勢いで嫌われている。

バカな弟は相談候補の対象外だ。

……なにがショックって、家族のことを話したこともそうだけど、キスしたこと、咲桜から抱き付いてきたこと、そして咲桜の言葉が忘れられていたこと。

……咲桜が憶えていないとなると、あれは全部自分に都合のいい妄想だと思えてくるから凹む……。