神宮先生から真っ当な指摘をされてしまった。
実のとこ、お隣の家のおねえさんがうちの鍵を預かっていて、それを借りて入って来ていたのだけど。
「それでも通報してもいいと思うぞ?」
説明したら更に非難された。
私は話題を変えたくて、また袖をパタパタさせながら軽い口調で言う。
「マナさんに常識求めてもしょうがないじゃないですか」
「確かに。でもあいつ、基本他人にはドライだからな。華取の世話焼くのはすきなんだろう。だから俺との縁談断っても、次々話を持ってくるんじゃないかと思う……」
「え、めんどくさい」
「うん、俺も面倒くさい」
再び利害が一致した。
私はなんかこう、先生とガシッと握手したい気分になった。
「華取、提案だが、この話一度受けないか?」
「受けって、……えっ? それは先生的に大丈夫なんですか? 生徒と婚約とか……」
先生のびっくり発言に、私は瞳を丸くした。
まさか本気で言っている?
「勿論本当じゃない。お互い、これからの愛子の過剰干渉を防ぐだけだ」
「……先生の目論見を教えてください」
私には神宮先生の意図ははっきりとはわからなかったので、素直に訊くしかないと思った。