「咲桜」

腕の力を緩めると、咲桜は身体を離した。

大事な熱が遠くなるのが淋しくて、その額に口づけた。

咲桜はびっくりした顔になる。

俺は満足げな気持ちになったが、それだけではまだ足りない。

右手で咲桜の頬をとらえ、そっと唇を重ねた。

軽く触れあわせただけで離れると、咲桜は真っ赤になって固まっていた。

可愛い。

キスしてしまった。なにを言うべきか思案していると、俯いた咲桜が右腕にしがみついてきた。

額を二の腕に押し付けて服の裾も握りこみ、伝わる熱は先ほどよりも熱い。

なにも言うことが出来なかった。

咲桜が隣にいてくれる。それだけで、総てが満たされた気持ちになる。

空いている左手で、咲桜の髪を撫でた。

ぴくりと肩が跳ねたけど、そのあとに咲桜から緊張が消えたように感じた。

じっと、動かない時間だけがあった。