「咲桜? どうした? ……苦しくなったか?」

ぶんぶん、と、俺の顔の脇で、咲桜の首が横に振られる。

「今は偽モノ、だけど――」

咲桜が少し空気を吸って、巻き付く腕に力がこもった気がした。

「私が流夜くんの家族になる」

「―――」

呆気にとられた。

まさかそんな考え方に行きつくなんて。

今まで、吹雪や降渡、ほかにも龍さんや在義さんと、近くにある人たちは俺の家族にあった事件を知っている。

けれど、まさか『家族になる』なんて言われたことはなかった。

「咲桜……」

いつもはすぐに対応が出来る頭がうまく動かない。どうして? 咲桜の言葉が嬉しすぎる。

「私が、流夜くんを大丈夫にするから」

苦しいほど抱き付かれて、抱きしめ返した。