神宮先生は大分視線を彷徨わせてから、観念したように話し出した。

「……俺は警察の捜査に関わっているが、警察の人間ではない。いつ離れるかわからないから、繋ぎ止めておきたいそうだ。それに在義さんの娘のお前と結婚したら、まあ離れられないだろう」

「先生ほんと何やってる人ですか……」

『犯罪学者』というのは、やっと言葉通りの意味なら理解してきたが、どうしたらそんな画策をされるようになるんだ。

神宮先生は何度目かのため息を吐いた。

「あとで話す。それで、たぶん愛子、お前のことも執心しているだろう。やけに可愛がられたりしてないか?」

「やけにって言うか……私、母さんがいないからその代わりみたいに構ってくれてると思いますけど……」

「母代り?」

「はい。私が生まれたときはもう父さんは県警の人だったんですけど、昔の後輩ってことで、父さんが忙しいの知ってるからよく家に来たりしてくれてて。家に一人のときは全部鍵閉めなさいって言われてたからその通りにしてたんだけど、いつの間にか家にいてびっくりしたことが結構あります」

「ただの不法侵入じゃないか」