「残酷なんて世界のどこにだって転がってる。お前も俺も、たぶんそれに近づくのが早くて、残酷性が目に見えて強いだけだ。咲桜を否定する要素になんかならない。だから、胸張って生きろ。頑張らなくていいから、胸張っていろ。俺や在義さんや、松生たちの愛情を素直に受け取っていればいい。――お前は、愛されているよ」
大丈夫。また、そう繰り返した。
「せん……流夜くんも、なにかあるの……?」
戸惑いに揺れている瞳と、砕けて来た口調。俺は素直に答えることにする。
「少しばかり、俺も変わった生まれをしているからな」
「生まれ……?」
「ああ。……咲桜がもう少し大丈夫になって、そのとき知りたかったら教えてやるよ」
「……今は、ダメなの?」
「駄目。さっき大泣きしたばかりだろ。俺のことまで抱え込まなくていい」
「やだ」
「やだって……」
子供っぽい反応に、今度は俺が当惑した。
でも、大人びた咲桜の口調と態度を多く見ているから、こういう幼い反応を見る度、心をゆるしてくれるような気がしてしまう。