「構わないだろ? 仮だけど婚約者演じなきゃならないんだ。名前くらい呼べるようにならないと」

「だからって――」

「はい」

「…………くん」

「くんしか聞こえない」

「~~~りゅうやくんっ」

咲桜は、もう自棄と言った様子で呼んだ。

「よく出来たな」

「………」

頭をわしゃわしゃ撫でると、咲桜は口を尖らせた。

「大丈夫だ、咲桜」

「………」

からかっていた手が落ち着いて、今度は整える。