「少し警察に首突っ込んでる程度の遙音も知ってるくらいだ。在義さんの娘バカは重症だって。だから、たぶん誰も咲桜と血が繋がっていないことを気にしてはいないと思うよ」

俺は知らなかったが、血縁関係のそれは、吹雪は内部での公然の秘密だと言っていた。

「だから、そんな大事な娘にこんなことしたら、怒られるのは俺の方だ」

「じゃあ離れましょう! 大丈夫です、今くっついてた弁解は私がしますから!」

「駄目だ」

静かに遮ると、咲桜は焦ったように「でも、あの」と言っている。

困らせた次の瞬間には、咲桜の顔は見えなくなった。

「もっと咲桜が大丈夫になるまで、こうしていたい」

「………」

咲桜は反論しなかった。少しの間のあとに腕の中で身じろぎして、その手が俺の腕のあたりを摑んだ。