「……華取、付き合ってる奴っているか?」

「え? いないですよ?」

なんでそんなことを訊く? 私が不思議に思っていると、神宮先生は薄く口を開いた。

「お前、俺を断ってもまた話を持ってこられるかもしれないな……」

「えっ」

思わず声をあげそうになると、気づいた先生の手で口を覆われて塞がれた。

さっと隣を窺う瞳は、マナさんを気にしているようだ。

顔の前で両手を合わせて「ごめんなさい」のポーズをとると、神宮先生は手を離してくれた。

なんとなく今までより顔を近づけて、声を潜めて話す。

「どうしてそんなことがわかるんです?」

「……あいつ、今までも俺に似たようなことふっかけてきたんだよ。かわしてきたけど、今回は在義さんの名前をちらつかせられて無理矢理連れてこられた。でもたぶんこれ、目的の対象は俺だけじゃない」

どうやら神宮先生は、こうして見合いを画策されたことが初めてではないらしい。

マナさん……ご自分のことにもっと気をかけてくださいよう……。

華やかな見た目と素晴らしい経歴のマナさんは、しかし浮いた話は一つもない。

マナさんがすきな人が誰だか知っているからなんとも言えないのだけど……マナさんの花嫁さん姿とか、見てみたいのになあ……。

「……目的って、何ですか?」